日本と500年近く交流があるにもかかわらず、なぜかあまり知られていないポルトガル料理。天ぷら、カステラ、金平糖など、日本の食文化に深く根ざしているのに、そのルーツを知る人は多くありません。
イワシやタコ、アンコウなど、日本に住む私たちにとって身近な食材を使いながらも、なぜか知られずにいるポルトガル料理。私の人生にポルトガル料理が深く刻まれたのは、今から36年前、1989年2月のマカオでの出会いでした。
当時ポルトガル領だったマカオで、現地実家がある日本人の大学の後輩に案内されたのは、一見すると何の変哲もないまるで海の家のような店。しかし、ペプシコーラの冷蔵ショーケースの横を抜け奥のドアを開けると、そこには煉瓦造りの素晴らしい空間が広がっていました。窓の外には海が広がり、その景色を眺めながら、初めて口にしたポルトガル料理とワイン。イワシの料理以外は記憶が曖昧ですが、初めての味なのに、その味はどこか懐かしさを覚えるほど日本人の口に合うものでした。
マカオでの鮮烈な体験から長い年月が流れ、ポルトガルへ行く機会も、ポルトガル料理を食べることもない日々が続きました。しかし、妻に何度もマカオでの話を熱く語り続けていたことがきっかけで、2019年末、夫婦でポルトとリスボンを旅することになりました。初めてのポルトガル料理に、千葉出身で醤油文化圏育ちの妻と、岡山出身で出汁文化圏育ちの私、異なる味覚の二人ともが大満足。次にいつ行けるかと、家庭での話題にのぼるほどになりました。
そして2024年6月、結婚記念日の食事を探していたとき、ふとコロナ禍直前のポルトガル旅行を思い出し、浅草の「ポルトガル食房Giro」を訪れました。そこで古川シェフと出会い、私のポルトガル料理への探求心をさらに深めるきっかけになりました。
料理の世界に身を置く者として、また一人のポルトガル料理愛好家として、この素晴らしい料理を日本でもっと広めたい。そんな思いから、ポルトガルの食に関する情報を発信する小さな一歩を踏み出すことにしました。
この素晴らしい食文化を、より多くの日本の方に知っていただくため、ポルトガル料理と食の情報を発信する活動を始めます。まずは、毎月1回、日本国内のポルトガルの食に関する最新ニュースやトピックをまとめた記事を掲載します。今後は、レシピ、ポルトガルワイン、食にまつわる文化的な背景など、多岐にわたるコンテンツを展開していく予定です。
2025年9月 出張料理人 アーロン・ササキ(佐々木恭隆)
*マカオで訪れたポルトガルレストランは、「Fernando’s Restaurant 」と思われる。
*浅草の「ポルトガル食房Giro」 は2025年5月をもって惜しまれながらも閉店。
